突如がんを宣告された主婦が、残りの人生を後悔なく生きようとする姿を描いたヒューマンドラマ『最期の夜はあなたと』。
今年の3月にLINEマンガオリジナル作品として連載を開始して以来、死期が迫る一人の主婦の苦悩や葛藤を描いた胸に迫るストーリー、そしてモラハラ旦那などのリアルなキャラクター描写が共感を呼び、大きな注目を集めています。
今回は、作者・なつまろ。先生と担当編集・坂井優太にインタビューを実施。『最期の夜はあなたと』が生まれたきっかけや、本作で用いられているタテ読みフルカラー形式のwebtoon制作の裏側について伺いました。
どん底だから見えてくる人の本性、本音を描きたい
――本作を描くことになった経緯を教えてください。
なつまろ。:普段から「後悔しない、幸せな生き方とは何なのか?」とよく考えていたんですよね。人って、いつどんな形で死が訪れるか分からないから、毎日を大事に生きていきたいなと。そこから“幸せな最期を迎えるまで”という本作のテーマが生まれました。物語は、穂乃果がどん底の状態から始まりますが、だからこそ見えてくる人の本性や本音があると思うんです。どん底だから生まれる人間ドラマを描いていきたいなと。
こういう人絶対にいる!リアルなキャラクター作りの裏側
――共感を呼ぶリアルなキャラクターたちは、どのようにして生まれたのでしょうか。
なつまろ。:こちらが初期のキャラクターデザインです。穂乃果の髪が長いバージョンは、初期の彼女の内向的な面を、そして髪を短くすることで心も軽くなって、前向きになっていく様子が表現できたかなと。
あと、マスターもヒロくんも最初は色々なパターンがあったんですよ。マスターに関しては、坂井さんと色々話し合って、最終的には眼鏡なしの髭ありになりましたね。
坂井:最初に、ヒロくんの真面目さを演出するために眼鏡を追加する案が出ていて。彼との差別化を図りたかったのと、マスターにはワイルドさをプラスしたかったので、眼鏡なしの髭ありになりました。
――ヒロくんといえば、そのモラハラ旦那っぷりがリアルで大きな反響を呼んでいますが、彼のキャラクター性はどのようにして作り上げていったのでしょうか。
なつまろ。:例えば、自分の夫がこんなことを言ってきたら嫌だなとか(笑)。あと、本人に悪気はないけど、すれ違ったりして、結局相手に嫌な思いをさせてしまうとか…。「こういう人、絶対どこかにいるよね!」と思う要素を入れるようにしています。
坂井:作中で描かれているヒロくんの行動は、僕の男性視点も少しは入っているのかなと。ヒロくんがマスターに嫉妬する回があるのですが、もしも僕がヒロくんの立場だったら…。もうこのカフェに残されたプリンが全てですよね(笑)。そういった「僕ならこうするかも」みたいな視点をなつまろ。さんにお伝えして、作品に反映することもあります。
カラーならではの鮮やかさ、縦の自由な表現…webtoon制作のきっかけ
――本作はタテ読みフルカラー形式のwebtoonで描かれていますが、なつまろ。先生がwebtoon制作を始めたきっかけを教えてください。
なつまろ。:学生時代は、つけペンを使ってスクリーントーンを貼って…いわゆる従来の紙のマンガを制作していました。雑誌に投稿もしていたのですが、なかなか結果が出なくて。一時期はマンガの世界から遠ざかっていたんです。それから、数年経ってやっぱりマンガが恋しいなと思っていた時に、ネットで無料で読めるフルカラーマンガの存在を知りました。
それまではモノクロで横読みのマンガの世界しか知りませんでしたが、webtoonが持つカラーならではの鮮やかさや空気感、縦の自由な表現に惹かれて、自分も描いてみたいなと思ったんです。そこから本格的にwebtoonの制作を始めました。
――紙のマンガからwebtoonへと表現の場を変えたことで、苦労したことはありましたか?
なつまろ。:やっぱりコマ割りが全然違うんですよ。例えばwebtoonだと、紙のマンガのようにコマが2〜3つ横並びになることはないんです。webtoonの投稿を始めた頃は、このコマ割りの癖が抜けなくて苦労しましたね。
webtoonだから表現できる、美しい“色”のシーン
――反対にwebtoonだからこそできる表現や、作中でお気に入りのシーンを教えてください。
なつまろ。:やっぱり色ですね。webtoonだから表現できる、美しい色を出したいなと思いながらいつも描いています。
なつまろ。:例えば、空が昼から夜、夜から朝に移り変わる時の表現が華やかに演出できたり。あと、穂乃果が手術後にシャワーを浴びるシーンがあるんですけど、水が下に流れていって暗転する、この繊細で消えそうな雰囲気は気に入っています。
――前作『あなたの愛が、毒だとしても。』もwebtoonですが、今作で表現の面で大きく変えたところはありますか?
なつまろ。:大きく変えたところはないのですが、今作では、背景に3Dを使うようになりました。実は、前作からも少し使っていたんですけどね。
「CLIP STUDIO PAINT」で背景素材を購入したり、3Dで空間を構築できる建築系のソフトを使って、自分で簡単な間取りを作って家具を配置して立体化していくんです。アングルも自由に変えられるので、壁や天井など色々な角度からの背景が制作できます。こういうリアルな背景があると、物語に説得力が増しますよね。その分、キャラクターが負けないようにしないとって思います。
――反対に前作から変わらずに踏襲しているテクニックがありましたら教えてください。
なつまろ。:セリフが長くなりすぎないように、コマが詰まりすぎないように…。あとは、読者さんが読む順番を迷わないように意識していますね。
プロットの段階から相談、webtoonの制作工程
――3D背景など、全ての工程はなつまろ。先生がお一人でやられているのでしょうか。制作工程についても詳しく教えてください。
なつまろ。:プロット、ネーム、作画、下塗り、仕上げ・背景の順番で作業していくのですが、下塗りや、登場人物たちの洋服の影などはアシスタントさんにお願いしています。その他の作業は私がやっていますね。
――担当編集とは、どの工程でコミュニケーションを取られるのでしょうか。
なつまろ。:最初のプロットの段階から相談します。数話先の展開も見据えて「◯話でこういったアクションを入れましょう!」とか、全体の方向性について私が相談したり。坂井さんがご提案してくださることもあります。
――プロットにはどのようなことが書いてあるのでしょうか。
なつまろ。:まず、ざっくりとした全体の流れを数行ずつ書いていって。そこからセリフを書き出して、実際の原稿サイズに割り振っていったり。このノートにはプロット以外にも、打ち合わせした時のメモとか、色々書いています。
坂井:あと、キャラクターの心情の移り変わりをExcelでまとめた大プロットというものもありますね。
読み進めるための駆動力を作りたい
――お二人で試行錯誤した、印象的なシーンなどはありますか?
坂井:1話のラストのシーンを作るときは、かなり盛り上がった記憶があります(笑)。穂乃果が子宮頸がんを宣告された後に、時間軸が未来になって「私が幸せな最期を迎えるまでの物語だ」で終わる…。この演出については、たくさん打ち合わせを重ねて、なつまろ。さんが考案してくださったんですよ。
なつまろ。:当初は、穂乃果が子宮頸がんを宣告されるところが1話のラストだったんですよね。そのラストでほぼ完成まで行ってたんですけど、もう少しパンチが欲しいという話になったんです。やっぱりwebtoonは、1話の入りと終わりがすごく大事なので。
坂井:1話で読者さんを掴まないと、2話すら読んでもらえないこともあるので、1話に全てを盛り込みました。
なつまろ。:でもこのシーンはかなり悩みましたね。穂乃果を殺したくない…本当に彼女の死を描けるのかって。
――遺影で描かれる穂乃果の雰囲気からして、そんなに遠くない未来だと思わせる演出ですよね。1話の時点では、穂乃果が亡くなる展開はまだ確定していなかったのでしょうか。
なつまろ。:彼女の死は元々決めていた展開なんですけど、その死をマンガの中で描くかどうかみたいなところは決めていなかったんですよ。
坂井:物語のゴールは “幸せな最期を迎えるまで”なんですけど、そこに至るまでに読者さんにある程度ストレスを与えたかったんです。ずっと幸せなままだと弱いというか…。やっぱり何かしらの起伏がないと読み進めるための駆動力にはならないのかなって。
だから、あえてこういう悲しい展開を挟んだりしているんですけど、逆にその展開を経て穂乃果の幸せを思わず願いたくなる。そんな読者さんの気持ちも醸成していけたら良いなと思っています。
――ストレスの部分でいうと、ヒロくんのモラハラや不倫疑惑はwebtoonでよく見かける、ある意味人気のある要素だと思うのですが、これもwebtoonを意識して取り入れたものなのでしょうか。
坂井:本作の企画がスタートした時、“強い女性”がキーワードとして出てきたんですよね。強い女性と言っても、物理的な強さや精神的な強さだったり、色々あると思うんですけど。なつまろ。さんが思う強さとは、病気に打ち勝つ精神力だったり、男性に振り回されない自立した心だったんです。なので、なつまろ。さんの考える強い女性像を表現するためのエッセンスとして、病気やモラハラ、不倫疑惑といった要素が自然と入ってきました。
なつまろ。:その前段で「死期が迫った既婚の女性に好きな人ができたらどうする?」みたいな。究極の選択を描きたいという話をしていたんですよね。
坂井:そうなんです。ただそういった物語を描く時に、男性に振り回される女性を主人公にすると、読者さんから好かれないだろうなと思ったので、そこで“強い女性”というキーワードが出てきたんですよ。
――主人公が読者から好かれるのは、webtoonでは重要なポイントなのでしょうか。
坂井:読者さんから好かれるというか、応援したくなる主人公は、webtoonに限らず紙のマンガでも重要なポイントなのかなと思います。それこそ、少年マンガだと応援したくなる主人公って昔からの定番ですし。最近のwebtoonで流行っている悪役令嬢も辛い境遇から這い上がっていく…とか、やっぱり応援したくなる要素があると、読者さんも主人公に共感して盛り上がっていくので、重要なポイントなのかなと思います。
webtoonは参入障壁が低くて、夢がある
――お二人が思うwebtoonの魅力や特徴を教えてください。
なつまろ。:webtoonの魅力は、やっぱりフルカラーだから出せる、空気感や透明感かなと思います。あとは、テーマ性でいうと「なんだこいつ!」みたいな反発や怒りを描いた方が、読み進めてくれる読者さんが多い印象です。
坂井:極論をいうと、イラスト1枚1枚繋げるだけで読めてしまうのがwebtoonだと思うんです。なので、マンガ制作の経験が浅かったり、特別な能力がなくてもトライできる、参入障壁の低さがwebtoonの特徴かなと。
なつまろ。:それこそ、マンガ初心者の方のwebtoon作品がいきなりヒットする可能性だってありますし。何が起きるかわからないというところは、webtoonならではだと思います。
坂井: LINEマンガは、紙のマンガのヒット作や大御所マンガ家さんの作品も掲載されているプラットフォームなので。ある日突然、そういった作品と肩を並べるかもしれないと考えると、すごく夢がありますよね。
――webtoon制作に必要な能力をあえて挙げるとするといかがですか?
坂井:トレンドを掴む力ですかね。テーマもそうだし、見せ方とか。
なつまろ。:確かに、webtoonは移り変わりが早いんですよね。5年前のwebtoonと比べると、テーマのトレンドはもちろん、コマの見せ方とかも全然違いますし。今は、とにかく読みやすさが重視されているのかなと。
――最後にこれからwebtoonに挑戦される方に向けてメッセージをお願いします。
なつまろ。:モノクロや横のマンガがダメだからwebtoonではなく、webtoonならではのカラーの楽しさ、縦読みの見せ方があるので、それを模索しながら自分なりに楽しんで描いていただきたいです。一緒にwebtoonを盛り上げていきましょう!
坂井:先ほど、webtoonは参入障壁が低いと話しましたが、一方でwebtoonのことはよく分からないから描かない…という方もまだまだたくさんいるんですよね。でも、読者さんもどんどん増えてきているので、たくさんの人に読まれる作品を作りたいならwebtoonを一つの選択肢として考えてもらえたら嬉しいです。
(文・取材=ちゃんめい、写真=はぎひさこ)
さらに、「リアルサウンドブック」にて、なつまろ。先生が作品に込めたメッセージについてのインタビューを掲載&マスターの姿を描いたサイン入り色紙のプレゼント企画を展開!
ぜひ合わせてご確認ください。
→https://realsound.jp/book/2022/07/post-1081202.html
◆応募方法
①をフォロー
②対象の投稿をリツイート
◆開催期間
7月22日(金)15:00〜8月5日(金)23:59
◆プレゼント内容
なつまろ。先生描き下ろしイラスト色紙1名様
※キャンペーン内容は変更になる場合がございます。詳細はLINEマンガ編集部公式Twitterアカウントでご確認ください。
<あらすじ>
結婚生活5年目。夫とのすれ違いも増えてきた専業主婦の穂乃果は、ある日定期検診で子宮頸がんと診断される。悲しみにくれる彼女の前に現れたのは、優しさ溢れるカフェのマスター。人生の最期を意識したとき、彼女はどんな選択を下すのか…。 |
今年の3月にLINEマンガオリジナル作品として連載を開始して以来、死期が迫る一人の主婦の苦悩や葛藤を描いた胸に迫るストーリー、そしてモラハラ旦那などのリアルなキャラクター描写が共感を呼び、大きな注目を集めています。
今回は、作者・なつまろ。先生と担当編集・坂井優太にインタビューを実施。『最期の夜はあなたと』が生まれたきっかけや、本作で用いられているタテ読みフルカラー形式のwebtoon制作の裏側について伺いました。
どん底だから見えてくる人の本性、本音を描きたい
――本作を描くことになった経緯を教えてください。
なつまろ。:普段から「後悔しない、幸せな生き方とは何なのか?」とよく考えていたんですよね。人って、いつどんな形で死が訪れるか分からないから、毎日を大事に生きていきたいなと。そこから“幸せな最期を迎えるまで”という本作のテーマが生まれました。物語は、穂乃果がどん底の状態から始まりますが、だからこそ見えてくる人の本性や本音があると思うんです。どん底だから生まれる人間ドラマを描いていきたいなと。
こういう人絶対にいる!リアルなキャラクター作りの裏側
――共感を呼ぶリアルなキャラクターたちは、どのようにして生まれたのでしょうか。
なつまろ。:こちらが初期のキャラクターデザインです。穂乃果の髪が長いバージョンは、初期の彼女の内向的な面を、そして髪を短くすることで心も軽くなって、前向きになっていく様子が表現できたかなと。
あと、マスターもヒロくんも最初は色々なパターンがあったんですよ。マスターに関しては、坂井さんと色々話し合って、最終的には眼鏡なしの髭ありになりましたね。
坂井:最初に、ヒロくんの真面目さを演出するために眼鏡を追加する案が出ていて。彼との差別化を図りたかったのと、マスターにはワイルドさをプラスしたかったので、眼鏡なしの髭ありになりました。
――ヒロくんといえば、そのモラハラ旦那っぷりがリアルで大きな反響を呼んでいますが、彼のキャラクター性はどのようにして作り上げていったのでしょうか。
なつまろ。:例えば、自分の夫がこんなことを言ってきたら嫌だなとか(笑)。あと、本人に悪気はないけど、すれ違ったりして、結局相手に嫌な思いをさせてしまうとか…。「こういう人、絶対どこかにいるよね!」と思う要素を入れるようにしています。
坂井:作中で描かれているヒロくんの行動は、僕の男性視点も少しは入っているのかなと。ヒロくんがマスターに嫉妬する回があるのですが、もしも僕がヒロくんの立場だったら…。もうこのカフェに残されたプリンが全てですよね(笑)。そういった「僕ならこうするかも」みたいな視点をなつまろ。さんにお伝えして、作品に反映することもあります。
カラーならではの鮮やかさ、縦の自由な表現…webtoon制作のきっかけ
――本作はタテ読みフルカラー形式のwebtoonで描かれていますが、なつまろ。先生がwebtoon制作を始めたきっかけを教えてください。
なつまろ。:学生時代は、つけペンを使ってスクリーントーンを貼って…いわゆる従来の紙のマンガを制作していました。雑誌に投稿もしていたのですが、なかなか結果が出なくて。一時期はマンガの世界から遠ざかっていたんです。それから、数年経ってやっぱりマンガが恋しいなと思っていた時に、ネットで無料で読めるフルカラーマンガの存在を知りました。
それまではモノクロで横読みのマンガの世界しか知りませんでしたが、webtoonが持つカラーならではの鮮やかさや空気感、縦の自由な表現に惹かれて、自分も描いてみたいなと思ったんです。そこから本格的にwebtoonの制作を始めました。
――紙のマンガからwebtoonへと表現の場を変えたことで、苦労したことはありましたか?
なつまろ。:やっぱりコマ割りが全然違うんですよ。例えばwebtoonだと、紙のマンガのようにコマが2〜3つ横並びになることはないんです。webtoonの投稿を始めた頃は、このコマ割りの癖が抜けなくて苦労しましたね。
webtoonだから表現できる、美しい“色”のシーン
――反対にwebtoonだからこそできる表現や、作中でお気に入りのシーンを教えてください。
なつまろ。:やっぱり色ですね。webtoonだから表現できる、美しい色を出したいなと思いながらいつも描いています。
なつまろ。:例えば、空が昼から夜、夜から朝に移り変わる時の表現が華やかに演出できたり。あと、穂乃果が手術後にシャワーを浴びるシーンがあるんですけど、水が下に流れていって暗転する、この繊細で消えそうな雰囲気は気に入っています。
――前作『あなたの愛が、毒だとしても。』もwebtoonですが、今作で表現の面で大きく変えたところはありますか?
なつまろ。:大きく変えたところはないのですが、今作では、背景に3Dを使うようになりました。実は、前作からも少し使っていたんですけどね。
「CLIP STUDIO PAINT」で背景素材を購入したり、3Dで空間を構築できる建築系のソフトを使って、自分で簡単な間取りを作って家具を配置して立体化していくんです。アングルも自由に変えられるので、壁や天井など色々な角度からの背景が制作できます。こういうリアルな背景があると、物語に説得力が増しますよね。その分、キャラクターが負けないようにしないとって思います。
――反対に前作から変わらずに踏襲しているテクニックがありましたら教えてください。
なつまろ。:セリフが長くなりすぎないように、コマが詰まりすぎないように…。あとは、読者さんが読む順番を迷わないように意識していますね。
プロットの段階から相談、webtoonの制作工程
――3D背景など、全ての工程はなつまろ。先生がお一人でやられているのでしょうか。制作工程についても詳しく教えてください。
なつまろ。:プロット、ネーム、作画、下塗り、仕上げ・背景の順番で作業していくのですが、下塗りや、登場人物たちの洋服の影などはアシスタントさんにお願いしています。その他の作業は私がやっていますね。
――担当編集とは、どの工程でコミュニケーションを取られるのでしょうか。
なつまろ。:最初のプロットの段階から相談します。数話先の展開も見据えて「◯話でこういったアクションを入れましょう!」とか、全体の方向性について私が相談したり。坂井さんがご提案してくださることもあります。
――プロットにはどのようなことが書いてあるのでしょうか。
なつまろ。:まず、ざっくりとした全体の流れを数行ずつ書いていって。そこからセリフを書き出して、実際の原稿サイズに割り振っていったり。このノートにはプロット以外にも、打ち合わせした時のメモとか、色々書いています。
坂井:あと、キャラクターの心情の移り変わりをExcelでまとめた大プロットというものもありますね。
読み進めるための駆動力を作りたい
――お二人で試行錯誤した、印象的なシーンなどはありますか?
坂井:1話のラストのシーンを作るときは、かなり盛り上がった記憶があります(笑)。穂乃果が子宮頸がんを宣告された後に、時間軸が未来になって「私が幸せな最期を迎えるまでの物語だ」で終わる…。この演出については、たくさん打ち合わせを重ねて、なつまろ。さんが考案してくださったんですよ。
なつまろ。:当初は、穂乃果が子宮頸がんを宣告されるところが1話のラストだったんですよね。そのラストでほぼ完成まで行ってたんですけど、もう少しパンチが欲しいという話になったんです。やっぱりwebtoonは、1話の入りと終わりがすごく大事なので。
坂井:1話で読者さんを掴まないと、2話すら読んでもらえないこともあるので、1話に全てを盛り込みました。
なつまろ。:でもこのシーンはかなり悩みましたね。穂乃果を殺したくない…本当に彼女の死を描けるのかって。
――遺影で描かれる穂乃果の雰囲気からして、そんなに遠くない未来だと思わせる演出ですよね。1話の時点では、穂乃果が亡くなる展開はまだ確定していなかったのでしょうか。
なつまろ。:彼女の死は元々決めていた展開なんですけど、その死をマンガの中で描くかどうかみたいなところは決めていなかったんですよ。
坂井:物語のゴールは “幸せな最期を迎えるまで”なんですけど、そこに至るまでに読者さんにある程度ストレスを与えたかったんです。ずっと幸せなままだと弱いというか…。やっぱり何かしらの起伏がないと読み進めるための駆動力にはならないのかなって。
だから、あえてこういう悲しい展開を挟んだりしているんですけど、逆にその展開を経て穂乃果の幸せを思わず願いたくなる。そんな読者さんの気持ちも醸成していけたら良いなと思っています。
――ストレスの部分でいうと、ヒロくんのモラハラや不倫疑惑はwebtoonでよく見かける、ある意味人気のある要素だと思うのですが、これもwebtoonを意識して取り入れたものなのでしょうか。
坂井:本作の企画がスタートした時、“強い女性”がキーワードとして出てきたんですよね。強い女性と言っても、物理的な強さや精神的な強さだったり、色々あると思うんですけど。なつまろ。さんが思う強さとは、病気に打ち勝つ精神力だったり、男性に振り回されない自立した心だったんです。なので、なつまろ。さんの考える強い女性像を表現するためのエッセンスとして、病気やモラハラ、不倫疑惑といった要素が自然と入ってきました。
なつまろ。:その前段で「死期が迫った既婚の女性に好きな人ができたらどうする?」みたいな。究極の選択を描きたいという話をしていたんですよね。
坂井:そうなんです。ただそういった物語を描く時に、男性に振り回される女性を主人公にすると、読者さんから好かれないだろうなと思ったので、そこで“強い女性”というキーワードが出てきたんですよ。
――主人公が読者から好かれるのは、webtoonでは重要なポイントなのでしょうか。
坂井:読者さんから好かれるというか、応援したくなる主人公は、webtoonに限らず紙のマンガでも重要なポイントなのかなと思います。それこそ、少年マンガだと応援したくなる主人公って昔からの定番ですし。最近のwebtoonで流行っている悪役令嬢も辛い境遇から這い上がっていく…とか、やっぱり応援したくなる要素があると、読者さんも主人公に共感して盛り上がっていくので、重要なポイントなのかなと思います。
webtoonは参入障壁が低くて、夢がある
――お二人が思うwebtoonの魅力や特徴を教えてください。
なつまろ。:webtoonの魅力は、やっぱりフルカラーだから出せる、空気感や透明感かなと思います。あとは、テーマ性でいうと「なんだこいつ!」みたいな反発や怒りを描いた方が、読み進めてくれる読者さんが多い印象です。
坂井:極論をいうと、イラスト1枚1枚繋げるだけで読めてしまうのがwebtoonだと思うんです。なので、マンガ制作の経験が浅かったり、特別な能力がなくてもトライできる、参入障壁の低さがwebtoonの特徴かなと。
なつまろ。:それこそ、マンガ初心者の方のwebtoon作品がいきなりヒットする可能性だってありますし。何が起きるかわからないというところは、webtoonならではだと思います。
坂井: LINEマンガは、紙のマンガのヒット作や大御所マンガ家さんの作品も掲載されているプラットフォームなので。ある日突然、そういった作品と肩を並べるかもしれないと考えると、すごく夢がありますよね。
――webtoon制作に必要な能力をあえて挙げるとするといかがですか?
坂井:トレンドを掴む力ですかね。テーマもそうだし、見せ方とか。
なつまろ。:確かに、webtoonは移り変わりが早いんですよね。5年前のwebtoonと比べると、テーマのトレンドはもちろん、コマの見せ方とかも全然違いますし。今は、とにかく読みやすさが重視されているのかなと。
――最後にこれからwebtoonに挑戦される方に向けてメッセージをお願いします。
なつまろ。:モノクロや横のマンガがダメだからwebtoonではなく、webtoonならではのカラーの楽しさ、縦読みの見せ方があるので、それを模索しながら自分なりに楽しんで描いていただきたいです。一緒にwebtoonを盛り上げていきましょう!
坂井:先ほど、webtoonは参入障壁が低いと話しましたが、一方でwebtoonのことはよく分からないから描かない…という方もまだまだたくさんいるんですよね。でも、読者さんもどんどん増えてきているので、たくさんの人に読まれる作品を作りたいならwebtoonを一つの選択肢として考えてもらえたら嬉しいです。
(文・取材=ちゃんめい、写真=はぎひさこ)
<プロフィール>
なつまろ。 マンガ家。代表作に、めちゃコミ『天宮社長は甘く優しく』 、LINEマンガ『あなたの愛が、毒だとしても。』など。現在『最期の夜はあなたと』を連載中。 なつまろ。先生Twitterアカウント 坂井優太 LINEマンガ編集者。担当作に『花びらとナイフ』『セミ≠ダブル』『決刀裁判』『最期の夜はあなたと』など。 |
さらに、「リアルサウンドブック」にて、なつまろ。先生が作品に込めたメッセージについてのインタビューを掲載&マスターの姿を描いたサイン入り色紙のプレゼント企画を展開!
ぜひ合わせてご確認ください。
→https://realsound.jp/book/2022/07/post-1081202.html
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◆応募方法
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◆開催期間
7月22日(金)15:00〜8月5日(金)23:59
◆プレゼント内容
なつまろ。先生描き下ろしイラスト色紙1名様
LINEマンガオリジナル作品『最期の夜はあなたと』作者×担当編集インタビュー!
— LINEマンガ編集部@ひさし本格始動 (@LINEmanga_edit) July 22, 2022
なつまろ。先生(@natsumaro_ )
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インタビューはこちらhttps://t.co/fm0EaRgZgO pic.twitter.com/uuCk6Fwpjs
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